新センサ班

指先装着型指先装着型6軸力センサ 軸力センサ軸力センサの研究の研究

ABSTRACT
 現在,作業現場では熟練者による精密作業が行われています.このような作業現場の手わざの技術は熟練者の動きを観察することで継承されています.しかし,このような方法では熟練者の手わざの技術の継承には不十分であり,作業の際に加わる力を計測し,定量化することが求められています.そこで指先に装着可能な6軸センサデバイスを試作し,ピンセットによる精密部品の組み立て作業時の指先に加わる力を計測しました.指先にデバイスを装着し,ピンセットをつかむ位置を変化させて組み立て作業を行った結果,指先に加わる力やトルクを定量的に示すことに成功しました.


把持力と微小な摩擦力が計測可能な箸型2軸力センサ

ABSTRACT
 日本では,様々な動作を行うことができる箸を用いて食品の把持を行っています.箸を用いた把持力計測として3軸力センサを用いた力計測が行われています.しかし,豆腐のような変形しやすい食品では破断が起こりやすく,また滑りやすいため食品の把持力推定を行うことが困難でした.そこで本研究では食品と箸の間に生じる把持力と微小な摩擦力の計測が可能な2軸力センサを試作し,変形しやすい食品を持ち上げる時の適切な把持力を摩擦力によって推定します.このセンサを用いて,静止摩擦力と動摩擦力の変化を検出することができました.摩擦力から最適な把持力の推定を行う可能性を示しました.


起立動作時に加わる足裏と臀部の力計測

ABSTRACT
 椅子からの起立動作は,日常生活で使用頻度の高い重要な動作です.起立動作では体の重心が臀部から足裏に移動し,この時の重心移動が重要と考えられています.従来研究では体幹前傾角度と重心の計測が行われ,起立動作において体幹前傾角度の変化による重心の移動が重要であることが示されました.しかし,座位時の膝関節の角度が重心の移動に及ぼす影響について研究されていませんでした.そこで本研究では起立動作に適した膝関節の角度を求めるために,力センサを用いた足底型デバイスとマット型デバイスを試作し,膝関節の角度が変化したときの臀部や足裏に加わる垂直力とせん断力を計測しました.その結果,起立動作に最も適した膝関節の角度が80°である可能性を示しました.


3軸力センサによる甲状腺内のしこりの硬さ計測

ABSTRACT
 甲状腺疾患において,触診は有効な診断方法として挙げられます.しかし,触診は医者の主観的な判断であり,経験や技量に左右されてしまうため,定量的な計測が求められています.そこで本研究ではしこりの大きさが計測できるだけでなく,大きさの違いを補正できる硬さ計測手法を提案しました.せん断力の増減からしこりの大きさを推定します.さらに,しこりの大きさと計測される垂直力の相関からしこりの大きさによる補正をすることで,しこりの大きさによらない正確な硬さ計測の可能性を示しました.


3軸力センサを用いたフォアハンドドライブ時の足裏応力計測

ABSTRACT
 卓球においてフォアハンドドライブは使用頻度が高く,より良い体重移動,体重の乗せ方が重要だと考えられます.そこで本研究ではインソールに3軸力センサを配置した靴型センサデバイスを試作しました.試作デバイスにより,経験者と初心者のフォアハンドドライブ時の足裏応力を計測しました.その結果,卓球経験者は適切な箇所に体重を乗せており,ひねり動作を上手く用いて打ち出していることを定量的に示しました.

グローブ型3軸力センサデバイスを用いたバスケットボールシュート時の指先力計測

ABSTRACT
 バスケットボールにおけるシュートは,膝の伸展運動を含めた体全体の動作による力を指先からボールに伝達することで行われます.そのため,力の伝達点である指先がボールに加える力が重要であると言えます.しかし,高画質カメラを用いたシュート時の動作分析や,ジャイロセンサを用いた身体部の回転運動の計測などが行われてきましたが,指先に加わる力を直接的に計測した研究は行われていません.そこで,グローブの各指先に3軸力センサを配置したグローブ型センサデバイスを試作し,経験者と初心者のシュート時の指先力をそれぞれ計測しました.その結果,経験者は体全体の動作を,ボールの運動量として上手く与えていることが分かりました.


円背による歩行への影響評価のための靴型3軸力センサデバイス

ABSTRACT
 近年,高齢者の円背と呼ばれる脊柱後湾変形が問題になっています.前傾姿勢がバランスに悪影響を与え,転倒事故につながると考えられています.従来研究として,円背姿勢からの起立への影響を調べたもの,円背歩行のバランス及び歩行能力の関係を示す研究などが行われています.しかし,円背の進行度による影響を定量的に歩行解析した研究は行われていません.そこで,靴内部に小型・薄型の3軸力センサを配置した靴型3軸力センサデバイスを試作し,円背の進行度を正常から重度まで4段階に分け,歩行計測を行いました.これにより,円背は歩行時の身体の重心位置を前方へ移動させ,推進力及び歩行をブレーキさせる力の低下に大きく影響を与えることを明らかにし,高齢者の歩行の改善に貢献できる可能性を示しました.


3軸力センサを用いた眼鏡装着型血圧脈波計測デバイス

ABSTRACT  
 トノメトリ法による血圧計測は,一般的に手首を用いて計測されます.しかし,手首での計測は相対的な高さの変動や,手首の関節の動きによる位置ずれにより,正確な計測は困難でした.そこで,体動の小さいこめかみで血圧脈波を計測する手法を提案しました. ただし,発話などの口の開閉によりセンサに加わる力が変動し,脈波波形に乱れが生じてしまいます.そこで,血圧脈波を計測するセンサとこめかみの体動を計測するセンサの2つの3軸力センサを配置した眼鏡装着型血圧脈波計測デバイスを試作しました.脈波計測用センサで得た脈波波形から体動計測用センサで得たこめかみの動きによる波形を差し引くことで,発話などの体動が生じた場合でも鮮明な脈波波形を取得することができました.


指先変形を利用した指先用3軸力計測デバイス

ABSTRACT  
 現在,ロボットの制御や熟練の技術の解析や保存などの観点から,人が物を操作する際に指先に加わる力を定量的に計測する技術が求められています.しかし,従来研究では指腹をセンサで塞ぐため,指先が対象と接触した際の触感が損なわれ,普段通りの操作ができないという問題があります.そこで本研究では,指の両側面にセンサを配置する事で,指腹を塞ぐことなく指先に加わる垂直方向荷重とせん断方向荷重を計測可能なデバイスを試作しました.試作したデバイスの出力値と指先で実際に加えた力の大きさを比較した所,高い相関が得られました.また,実際にピンセットで重りを摘み上げる際に指先に加わる力を計測し,試作したデバイスの有用性を示しました.


歩行中の足趾力計測のための3軸力センサを用いた靴型センサデバイス

ABSTRACT
 近年,足趾に関する障害が増加しており,その原因の一つとして足趾の運動不足によるものがあります.その対策として,足趾筋力を増強するトレーニングが考案されていますが,歩行中の計測が困難であることと体重や蹴りだしの力の影響を受けてしまうことから,足趾筋力の歩行中の評価はされていません.そこで本研究では,微小な3軸力センサを利用した靴型センサデバイスを使用して,足趾に加わる力を計測しました.足趾を固定した状態での歩行を行うことで,これまで計測できなかった歩行中の足趾力を定量化しました.足趾を意識した歩行,歩幅やピッチを変化させた歩行を行い,歩行中の足趾力を比較しました.実験結果から,ピッチを上げると1.6倍に,歩幅を大きくすると1.3倍に増加することを確認しました.


3軸力センサを用いた分廻し歩行の安定性計測

ABSTRACT  
 片麻痺患者の歩行方法は,足を外側から回す分廻し歩行を行います.それにより重心が外側に傾き,転倒の危険性が高まります.しかし,従来の研究では,短下肢装具を用いた分廻し歩行を再現した上での計測は行われていません.また,健常者と片麻痺患者の足圧パターンの比較もされていますが,垂直力のみの計測で,せん断方向への影響が示されていません.そこで本研究では,3軸力センサを配置した短下肢装具型センサデバイスを用いて,通常歩行時,分廻し軌跡を変えた時の足底に加わる垂直力とせん断力を計測し,歩行の安定性を評価しました.各センサの極大値のばらつきと接地時間の差は評価の示標として使用可能であり,この2つが片麻痺患者の歩行の改善の示標となる可能性を示しました.


日常的な血圧計測のための眼鏡装着型血圧脈波計測デバイス

ABSTRACT
 近年,日常的な血圧計測方法としてトノメトリ法が注目されています.トノメトリ法は一般的に手首の橈骨動脈で計測を行います.しかし,手首は歩行時やデスクワーク時に大きく動くため,正確な血圧計測が困難という問題があります. そこで,こめかみ付近の浅側頭動脈で計測を行うメガネ装着型血圧脈波計測デバイスを試作しました.こめかみは手首に比べ,動きが小さいため,より正確な血圧計測が可能となります.試作したデバイスを装着し,歩行とデスクワークの動作前後のSN比(信号対雑音比)の計測実験を行いました.SN比は歩行時で13%低下,デスクワーク時で8%の低下に抑制できました.


ギプス装着に伴う褥瘡予防のためのフレキシブル3軸力センサ

ABSTRACT
 近年,ギプスなどの医療機器が原因で生じる褥瘡が注目されています.褥瘡とは,皮膚の一定部位に持続的力が加わり,皮膚が壊死する症状です.これまで褥瘡は圧縮応力が原因と言われていましたが,近年では圧縮応力,せん断応力,引張応力が原因と言われています.しかし,従来の研究では垂直応力の計測しか行われていません.そこで,本研究ではギプス用のフレキシブル3軸力センサを試作し,ギプス装着時の踵部の垂直応力とせん断応力を計測することで,ギプス装着時の褥瘡予防に適する体勢を示しました.実験結果より,膝関節屈曲角度30°,踵の高さ200 mmの姿勢が褥瘡予防に適していると示すことができました.


3軸力センサによる踵の高さの違いと足底応力の変化計測

ABSTRACT
 ハイヒールなどの踵の高い靴を頻繁に使用すると,中指に加わる圧力とせん断力の増大により,外反母趾になりやすいと言われています.そのため外反母趾の評価をする為には足底の局所的な応力の計測が必要です.しかし圧力センサシートなどでは局所的な応力の計測ができません.そこで,足先のアーチ形状に加わる局所的な応力の計測をすることができる小型な3軸力センサを配置した靴底型センサデバイスを製作しました.製作した靴底型センサデバイスには3軸力センサが4か所に配置されています.靴底型センサデバイスを高さ調節が可能なインソールに挿入し立脚時の足趾の付け根と踵の応力を計測したところ,局所的な応力の計測を行う事ができました.


高精度な生体内組織硬さ計測のための小型3軸力センサを用いた硬さ計測デバイス

ABSTRACT 
 近年,医療現場において,内視鏡手術が普及しています.内視鏡手術では, 体に開けた小さな穴に指を入れることができないため,開腹・開胸手術で行われてきた触診ができず,硬さによる正常な組織とがんの判別が困難です.そこで,内視鏡先端部での触覚情報を伝える研究が進められています.従来研究ではデバイスに対し垂直方向の力しか計測ができず,斜めに接触した場合,誤差が増大し計測精度が低下するという問題がありました.そこで垂直方向と2方向のせん断方向の力を計測可能な小型3軸力センサを用いて,内視鏡に装着可能な触診センサを開発しました.評価実験により,計測対象に斜めに接触した場合の誤差を低減でき,計測精度が向上することを確認しました.


歩行時の足裏せん断応力計測に適した薄型3軸力センサ

ABSTRACT 
 靴の中に入れるインソールは,疲労の低減,足の疾患の治療などの目的で使用されています.しかし,その効果の判定の多くは使用者の主観に委ねられます.そこでインソールの効果を定量的に評価するために,せん断応力を高感度に計測できる小型・薄型な力センサが必要であると考えられます.本研究では,応力を3方向に分離して計測できる3軸力センサの提案と試作を行いました.台形状突起部にカンチレバーが接し,台形状突起部の変形の方向によって,各カンチレバーでひずみが増減する構造としました. 歩行による従来センサとの比較実験により,せん断応力計測時の圧力の影響が小さくなり,インソールの評価に有用であることが示されました.


内視鏡手術支援のための生体内組織硬さ計測デバイス

ABSTRACT
 医療現場において,内視鏡による観察下での手術を行うことで,患者の負担軽減や早期回復が期待されています.この内視鏡手術において,内視鏡先端部での触覚情報を伝える研究が進められています. その中に柔軟物の硬さを定量的に評価するデバイスがありますが,測定物の厚みが既知でなければならない問題があります.そこで, 挟み機構を用いることで,被測定物の厚みがわからなくても硬さを計測できるデバイスの試作と評価を行いました.試作デバイスは,2軸力センサとせん断力センサと力伝達機構により構成しました.このデバイスにより,計測対象の厚みがわからなくても,ヤング率の低い柔軟物の硬さを計測できることを示しました.


伸縮性と非伸縮性を兼ね備えた電子回路内蔵PDMSデバイス

ABSTRACT 
 近年,日常生活中の生体情報の計測が注目されています.その1つに反射型パルスオキシメータがありますが,このデバイスは肌に直接接触させるため,人の肌の伸縮に合わせた伸縮性が必要とされています.しかし,発光部と受光部の距離が変化すると計測精度が悪くなるという問題もあります.そこで本研究では伸縮性を持ちつつも,伸縮して欲しくない部位は長さを一定に保つ,伸縮性と非伸縮性を兼ね備えた電子回路内蔵PDMSデバイスを試作しました.フレキシブル基板をsin波形状に折り曲げた伸縮部と,直線型形状の非伸縮部を組み合わせた構造をとしました.伸び計測実験の結果,デバイス全体では9.8Nの力で10%伸びましたが,伸縮部と非伸縮部では11倍以上の伸びの差が確認できました.